共同住宅の設計では、共用廊下を容積率不算入として扱えるかどうかが、計画全体の成立に大きく影響します。
その中で実務上よく問題になるのが、共用廊下やアルコーブに各住戸のエアコン室外機を設置する場合、その部分が容積率算定上どう扱われるのか、という点です。
結論からいえば、各住戸用の住宅用エアコン室外機を共用廊下の一部に設置したことだけで、直ちにその部分が容積率算定対象になるとは限りません。
共用廊下と一体の未区画空間として扱える限り、共用廊下等の容積率不算入の枠内で整理されるのが、実務上の一般的な取扱いです。
ただし、室外機置場のつくり方によっては、その部分が共用廊下ではなく、独立した設備置場や屋内的用途の空間とみなされ、容積率算定対象に入るリスクがあります。
そのため、室外機の有無そのものよりも、「そのスペースがなお共用廊下の一部と評価できるか」が設計上の重要な判断ポイントになります。
共用廊下は原則として容積率不算入
建築基準法第52条第6項では、共同住宅の共用の廊下や階段などについて、一定の部分を容積率算定の延べ面積に算入しない取扱いが認められています。
実務上は、外廊下か内廊下かを問わず、共同住宅の共用廊下等に該当する部分であれば、容積率不算入として扱うのが基本です。
国土交通省の通知でも、共用廊下にはエントランスホールやエレベーターホールなどの共用部分が含まれる考え方が示されています。
([mlit.go.jp](https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/105/81000275/81000275.html))
ただし、ここで重要なのは、何でも共用廊下に含まれるわけではないという点です。
同通知では、収納スペースや区画されたロビーなど、屋内的用途に供する部分は共用廊下等に含まれないとされています。
つまり、見た目や名称が「廊下の一部」であっても、実態として独立した用途空間になっていれば、不算入の対象から外れる可能性があります。
([mlit.go.jp](https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/105/81000275/81000275.html))
室外機を置いただけで直ちに算入とは限らない
各住戸用の住宅用エアコン室外機については、行政実務上、設置したことだけで当然に床面積算入とする運用ではありません。
近畿建築行政会議の共通取扱いQ&Aでも、住宅用エアコン等の室外機の設置部分について特別な面積基準を設けていないこと、また、共用廊下に接して設けられるアルコーブやポーチで、共用される空間とみなし得るものは、開放廊下か否かにかかわらず容積率算定対象の床面積に算入しないことができると整理されています。
([pref.hyogo.lg.jp](https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks29/documents/shitsugikaitou.pdf))
([pref.nara.jp](https://www.pref.nara.jp/secure/198626/kinki%20kyoutsuu%20shitsugikaitou.pdf))
このため、共用廊下の一部に室外機を置く計画であっても、その部分が廊下と一体のオープンな空間として扱えるのであれば、直ちに容積率算定対象になるとはいえません。
容積率算定対象になりやすいのは「区画された室外機置場」
注意が必要なのは、室外機そのものではなく、室外機置場のつくり方です。
たとえば、共用廊下側の見た目を整えるために、室外機置場を壁や扉、閉鎖性の高いルーバーなどで強く囲ってしまうと、その部分は単なる廊下の一部ではなく、独立した設備置場や物置に近い空間と評価されるおそれがあります。
その場合、共用廊下等の容積率不算入の対象から外れ、床面積算入を求められるリスクが生じます。
ここでのポイントは、「囲ったら必ず算入」という単純な話ではなく、その計画がなお通行の用に供する共用空間といえるか、それとも区画された屋内的用途空間とみるべきか、という評価にあります。
国土交通省通知が、収納スペースや区画された部分などの屋内的用途空間を共用廊下等に含めないとしているのは、この判断の根拠になります。
([mlit.go.jp](https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/105/81000275/81000275.html))
実務上は「未区画のアルコーブ」として処理するのが基本
容積率不算入の扱いを維持しやすい計画としては、共用廊下から連続した未区画のアルコーブ形状とし、その中に室外機を納める方法が一般的です。
つまり、廊下から扉で仕切らず、明確な独立室をつくらず、あくまで共用廊下の一部として読める形にしておくことが重要です。
この考え方は、近畿建築行政会議の共通取扱いQ&Aとも整合的です。
([pref.hyogo.lg.jp](https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks29/documents/shitsugikaitou.pdf))
また、自治体によってはアルコーブの扱いについてさらに具体的な基準を設けている場合があります。
たとえば練馬区では、共用廊下とアルコーブの間に門扉等がないことや、アルコーブの寸法・有効幅員に関する考え方が示されています。
([city.nerima.tokyo.jp](https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/sumai/takuchi/kentiku-toriatukai.files/10.pdf))
容積率とは別に、廊下の有効幅員にも注意が必要
室外機計画では、容積率の問題だけでなく、避難上必要な廊下の有効幅員も必ず確認しなければなりません。
建築基準法施行令第119条では、共同住宅の共用廊下について、住戸や住室の床面積合計が一定規模を超える場合に、両側居室なら1.6m以上、その他なら1.2m以上の幅員が必要とされています。
([pref.chiba.lg.jp](https://www.pref.chiba.lg.jp/juutaku/chintai/koureisha/documents/kenchikukijun-sekourei119.pdf))
そのため、たとえ室外機スペースが容積率不算入として整理できたとしても、室外機が廊下側に張り出して有効幅員を欠けば、別の意味で計画が成立しません。
実務上、室外機を廊下に突出させるのではなく、アルコーブや窪みの中に納める設計が重視されるのはこのためです。
最終判断は特定行政庁・確認検査機関との事前協議が不可欠
ここまでの整理は、法令・通知・行政実務に基づく一般的な考え方です。
ただし、実際の確認申請では、特定行政庁や指定確認検査機関ごとに運用差が出ることがあります。
たとえば、
• アルコーブ形状でも、室外機設置部分の扱いを厳しく見る
• ルーバーの開放性や区画性の程度によって判断を分ける
• 有効幅員や共用性の考え方について独自の運用をしている
といったケースは珍しくありません。
容積率が厳しい計画では、数平方メートルの扱いが事業収支やプラン全体に影響することもあります。
そのため、室外機置場を共用廊下やアルコーブ内に計画する場合は、基本計画の早い段階で、特定行政庁または確認検査機関に事前相談しておくことが重要です。
まとめ
共同住宅の共用廊下に各住戸用のエアコン室外機を設置する場合、室外機を置いたことだけで直ちにその部分が容積率算定対象になるわけではありません。
共用廊下と一体の未区画空間として扱える限り、共用廊下等の容積率不算入の枠内で整理されるのが実務上の一般的な考え方です。
一方で、壁・扉・閉鎖的なルーバーなどによって独立性の強い室外機置場をつくると、その部分が共用廊下ではなく、設備置場や屋内的用途空間と評価され、容積率算定対象に入るリスクがあります。
さらに、容積率の問題とは別に、共用廊下の有効幅員や避難安全上の支障がないかも必ず確認が必要です。
したがって、実務上は「未区画のアルコーブに納める」「廊下有効幅を確保する」「事前協議で運用を確認する」の3点が、計画を安全に進めるための基本になります。

