共同住宅(マンション)の設計で、断面計画を進めていると必ず気になってくるのが「31mライン」です。
特に、
- 階高を少し上げたい
- 最上階住戸の仕様を良くしたい
- 梁成が厳しい
- 二重床を確保したい
といった条件が重なると、
「あと少しで31mを超える…」
というケースは珍しくありません。
そして、非常用エレベーターの設置義務が発生すると、
- シャフトスペース
- 乗降ロビー
- 非常電源
- 防火区画
など、計画全体に大きな影響が出ます。
そのため実務では、
「31mを超えるか」
「超えた場合に緩和へ入れられるか」
を、初期ボリューム段階から検討することが非常に重要になります。
今回は、建築基準法施行令第129条の13の2をもとに、共同住宅で実際によく検討される「非常用EV免除・緩和規定」を、実務目線で整理します。
共同住宅で使える「非常用EV免除」の3ルート
非常用エレベーターの免除規定はいくつかありますが、共同住宅で実際に検討されるのは主に次の3ルートです。
① PH(塔屋)のみ31mを超えるケース
まず基本となるのが、この「塔屋扱い」の考え方です。
31mを超える部分に居室を設けない
31mを超える部分が、
- 階段室
- EV機械室
- 設備スペース
- 昇降機塔
など、いわゆる塔屋部分のみで構成される場合、非常用EVの設置が不要となるケースがあります。
共同住宅では、
「住戸部分は31m以下に収め、PHのみ突出させる」
という計画は比較的よく見られます。
設計時の注意点
ただし実務では、
- PH面積
- 用途
- 不算入条件
- 高さ算定
などで確認機関ごとの差が出ることがあります。
特に、
「どこまでをPH扱いとするか」
は事前協議が重要です。
倉庫的利用や居室的利用と判断されると、扱いが変わる可能性があります。
② 31m超部分を「500㎡以下」に抑える
共同住宅で多く使われるのが、この面積緩和です。
31mを超える部分の床面積合計を500㎡以下にする
31mを超える部分について、
各階の床面積合計を500㎡以下
に抑えることで、非常用EVの設置を回避できるケースがあります。
実務では、まずこのルートを検討することが非常に多い印象です。
実際によくある調整方法
例えば、
- 最上階をセットバックする
- 住戸数を減らす
- ルーフバルコニー化する
- 共用廊下面積を整理する
など。
特に分譲マンションでは、
「上層階をプレミアム住戸化しながら500㎡以下へ収める」
という計画もよく見られます。
「床面積」の考え方に注意
ここでいう「床面積」は、原則として建築基準法上の床面積で判断されます。
そのため、
- 共用廊下
- EVホール
- 共用部
などを含めると、想定より大きくなるケースがあります。
一方、
- 一定条件を満たす外廊下
- バルコニー
- 吹抜
などは扱いに注意が必要です。
特に、
「開放廊下を床面積不算入とできるか」
は、確認検査機関や行政との協議ポイントになることがあります。
③ 「100㎡区画」で成立させる方法
500㎡を超えるボリュームを確保したい場合に検討されるのが、この100㎡区画です。
100㎡以内ごとに防火区画する
一定条件のもと、
100㎡以内ごとに耐火区画を構成する
ことで、非常用EVを不要とできるケースがあります。
共同住宅は比較的成立しやすい
共同住宅では、
- 界壁
- 床スラブ
がもともと耐火構造となるため、他用途に比べると成立しやすいケースがあります。
特に、
「1住戸=100㎡以下」
となる計画では、住戸単位で区画を成立させやすいことがあります。
また、玄関ドアは遮煙性能付きの特定防火設備が必要になりますが、
廊下に面する窓については、1㎡以内で両面20分防火設備とすることで成立できるケースがあります。
このあたりは確認機関によって確認ポイントが異なるため、事前協議を行うケースも少なくありません。
注意したいポイント
実務では、
- 玄関ドア仕様
- 遮煙性能
- 廊下面する開口部
- 防火設備条件
などを細かく確認する必要があります。
計画内容によっては、確認機関との事前協議が必要になるケースもあります。
実務で特に注意したい「31mライン」
共同住宅では、
「31mラインが階の途中を通る」
ケースがあります。
例えば、
- 傾斜地
- 高低差敷地
- 平均地盤面の設定
など。
この場合、
その階を“31m超の階”として扱うか
で、500㎡算定などに影響することがあります。
そのため、断面計画と高さ算定は早い段階から整理しておくことが重要です。
実際のボリューム検討ではどう進める?
実務では、一般的に次の流れで検討するケースが多いです。
- まず31mを超えるか断面確認
- 500㎡以下へ調整可能か確認
- 上層階セットバック案を比較
- それでも厳しい場合に100㎡区画を検討
- PH整理で成立できるか確認
特に分譲マンションでは、
- 専有面積
- 住戸数
- プレミアム住戸化
- 商品企画
とのバランス調整になるため、法規だけではなく事業性も含めた検討になります。
まとめ|31mが見えたら断面検討を始める
共同住宅の設計では、
「あと少しで31mを超える」
というケースが本当に多くあります。
そして、非常用EVの有無は、
- 専有率
- 建築コスト
- プラン効率
- 事業収支
にも大きく影響します。
そのため実務では、
- 500㎡以下へ調整できないか
- PH整理で成立しないか
- 100㎡区画を組めないか
を、初期段階から検討することが重要になります。
特に断面計画は後戻りしやすいため、ボリューム段階から整理しておくことが、スムーズな設計につながります。
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