- マンション(共同住宅)の設計では、「面積計算」の理解が非常に重要です。
実務では、
- 確認申請用(法規面積)
- 販売用面積
など、用途によって算定基準が異なります。
さらに、
- 端数処理
- 壁芯・内法
- 容積率不算入
- 建築面積の算定
- バルコニーの扱い
- PS・MBの算入
など、細かなルールを理解していないと、図面不整合や販売トラブルにつながることもあります。
今回は、共同住宅で実務上よく使う「面積計算ルール」を整理します。
1. 面積計算は「用途」でルールが変わる
共同住宅では、図面の用途によって算定基準が異なります。
| 用途 | 主な目的 |
|---|---|
| 法面積(確認申請) | 建築基準法上の審査 |
| 販売用面積 | パンフレット・契約資料 |
同じ建物でも、「どの面積を見ているか」で数字が変わるため注意が必要です。
2. 端数処理ルール
販売用面積
一般的には、
- 小数点第3位を切捨て
- 小数点第2位まで表示
とするケースが多くなります。
例
75.238㎡ → 75.23㎡
販売図面では、パンフレットや重要事項説明書との整合が重要になります。
法面積(建築基準法)
確認申請などの法面積では、
- 小数点第3位を切上げ
- 小数点第2位まで表示
とする運用が一般的です。
例
75.231㎡ → 75.24㎡
ただし、特定行政庁や指定確認検査機関によって運用差があるため、事前確認が重要です。
3. 壁芯計算と内法計算
壁芯計算
共同住宅では、
- 建築面積
- 延べ面積
- 専有面積
などを、原則として「壁芯(通り芯)」基準で算定します。
なお、建築基準法施行令第2条では、床面積は「壁その他の区画の中心線」で囲まれた部分により算定することが原則となっています。
内法計算
販売図面や登記関係では、「内法(うちのり)」基準で計算される場合があります。
壁の内側寸法で計算するため、壁芯面積より小さい数値になります。
4. 容積率不算入は非常に重要
共同住宅設計では、容積率不算入規定の理解が極めて重要です。
この扱いを誤ると、
- 計画戸数
- 専有面積
- 事業収支
に大きな影響が出ます。
主な容積率不算入項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 共用部分 | 共用廊下・共用階段・EVホール・エントランスホール等 |
| 地階(住宅等) | 当該用途床面積の1/3以内 |
| 車庫・駐輪場 | 延べ面積の1/5以内 |
| 備蓄倉庫 | 延べ面積の1/50以内 |
| 蓄電池設置部分 | 延べ面積の1/50以内 |
| EV昇降路 | 限度なし |
| 宅配ボックス | 延べ面積の1/100以内 |
求積図で重要なこと
実務では、
- 不算入部分
- 算入部分
審査機関が一目で判断できるようにすることが重要です。
5. 建築面積の算定と「1m後退ライン」
共同住宅では、建築面積の算定も重要なポイントになります。
特に、
- 庇
- バルコニー
- 共用廊下
- キャノピー
などの張り出し部分は注意が必要です。
建築面積の基本
建築面積は、原則として「外壁または柱の中心線」で囲まれた部分により算定します。
1mを超えて張り出す部分
庇やバルコニーなどが外壁中心線から突き出す場合、
1mを超える部分について建築面積に算入
されます。
一般的には、
- 1m以下 → 不算入
- 1m超過部分 → 算入
として整理します。
実務で注意したい部分
特に共同住宅では、
- エントランス庇
- バルコニー先端
- 開放廊下
- ルーフ付き車寄せ
などで、建築面積への算入漏れが起こりやすくなります。
確認申請前に、平面図・立面図・断面図を合わせてチェックすることが重要です。
6. バルコニー・開放廊下の「2mルール」
共同住宅で頻出なのが、バルコニーや開放廊下の床面積算定です。
バルコニー等の床面積算定
ベランダ・バルコニー・ポーチなどは、外壁中心線から2m以内の部分について、原則として床面積に算入しません。
一般的に「2mルール」と呼ばれる部分です。
「開放性」に注意
ただし、2m以内であっても、
- 腰壁が高い
- 側面が囲われている
- サッシ等で閉鎖的になっている
などの場合、「室内的用途」と判断され、床面積に算入されるケースがあります。
平面図だけでなく、立面図・断面図での検討も重要です。
7. 坪数・畳数の換算
坪数
一般的には、
坪数: 1㎡ = 0.3025坪
として換算します。
畳数
原則として、
畳数: 原則として1畳 = 1.62㎡
で計算します。
和室だけでなく、洋室表記でも使われることがあります。
8. 居室・専有部の細かなルール
和室
一般的には、
- 板畳 → 算入
- 床の間 → 不算入
とするケースが多いですが、事業主基準によって異なる場合があります。
LDR(リビング・ダイニング・ルーム)
LDR内にある、
- PS(パイプスペース)
- カウンター
などは、原則としてLDR面積に含みます。
中和室(2室採光)
LDRと一体利用される中和室では、合計面積に対して端数処理を行うケースがあります。
販売図面との整合に注意が必要です。
9. 販売図面で表記される主な項目
共同住宅では、専有面積以外にも以下を個別表記することがあります。
- バルコニー
- ルーフバルコニー
- ポーチ
- アルコーブ
- 専用庭
- テラス
- 室外機置場
販売図面・パンフレット・重要事項説明書で数値を統一することが重要です。
10. ダブルチェックが必須
共同住宅の面積ミスは、
- 販売トラブル
- 確認申請修正
- 行政指摘
につながるため、厳重なチェックが必要です。
実務で重要なこと
- 加算方式によるダブルチェック
- 面積表と平面図整合
- 設計概要書との照合
- パンフレット数値統一
などを徹底します。
実務上の注意点
共同住宅の面積計算は、法文だけでなく、
- 行政運用
- 指定確認検査機関
- デベロッパー基準
によって細かな違いがあります。
特に、
- バルコニーの扱い
- PS・MB
- 柱ヤセ
- 開放廊下
- 建築面積算定
などは、事前に基準統一しておくことが重要です。
まとめ
共同住宅の面積計算は、単なる数字合わせではありません。
- 法規
- 販売
- 事業性
すべてに直結する重要な設計業務です。
実務設計でも、一級建築士試験でも頻出テーマなので、ぜひチェックリストとして活用してみてください。

